「日本病」はもはや対症療法ではどうにもならない
本書の醍醐味は、そういった政治の病、社会の病が、生命科学との対比で語られていることだ。たとえば、バブルとショックを繰り返すことで増える不良債権は、「がん」ととても似た動きをする。そして、最近のがん医療は悪い細胞の外科的な除去から体内の制御系を何とか回復させることへと目標が変わりつつあるのに、日銀が選択している金融緩和は逆に経済の制御系の破壊に他ならない、という。
いずれにしても、「日本病」はもはや対症療法ではどうにもならない状態に陥っている。根治療法を行うのは誰か。政治家か。いや、それは違う。私たち有権者なのだ。(岩波書店 800円+税)