「国家戦略特区の正体」郭洋春氏
■規制緩和は格差を広げるだけ
勝ったらこんなにいいことがある、とビル・ゲイツなど勝ち組の成功物語が宣伝されるが、99%の貧しい人々の世界はクローズアップされない。
「1980年くらいまで、日本は一億総中流社会でした。でも、新自由主義にもとづくグローバリゼーションが進み、競争社会はどんどん苛烈になり格差も広がっています」
特区で得られる利益は外国資本に持ち去られる。
副題にあるように「外資に売られる日本」であり、TPPと特区の動きの連動も明らかにする。では、いったいどうしたらいいのか。
「経済成長や人口増という古い発想から抜け出すことです。安心・安全な農業と観光という、知識創造型の産業こそが、日本が生き残る道です」
特区の危険性にクラクラとくるが、将来の展望も見えてくる。(集英社 720円+税)
▽カク・ヤンチュン 1959年千葉県生まれ。法政大学経済学部卒。立教大学経済学研究科博士課程満期退学。現在立教大学経済学部教授。専門は開発経済学。著書に「開発経済学-平和のための経済学」「現代アジア経済論」「TPP すぐそこに迫る亡国の罠」ほか。