「期限切れのおにぎり」鈴木哲夫氏
実際、阪神・淡路大震災では、当時の村山首相の初動がもたついて犠牲を大きくしたが、その後、この二人三脚体制が取られて復旧は動き出した。
「ところが今回は、テレビ会議で失言した松本文明内閣府副大臣レベルを、単なる連絡要員として派遣しただけ。大雨の予報が出て、官邸は避難者を家屋の中に移動させるように指示したが、現地の首長が『激しい揺れで家屋がつぶれる恐怖があるからこうして外にいる。それを建物に入れとは現場の気持ちが分かっていない』と怒る場面がありました。現場に決定権を持った政治家がいれば、その場で『屋外で行こう』と決めればいい。官邸はそれを追認し、何かあれば手を打てばいいのです」
官邸が最終決定権を持つのはもちろんだが、そのプロセスに「現場主義」が入っていなければ意味がない。
本書では多くの教訓が語られている。新潟県中越地震では、被災者が生き延びるために期限切れのおにぎりを配る決断ができるかという首長の自問自答。東日本大震災では、霞が関が平等という概念を自ら壊し、市民に不平等が生じてもできることから手を打っていくべきだという官僚の反省。復旧・復興は「急ぐ」だけでなく「寄り添い、待つ」ことだというローカル紙編集長など……。