「『感情』の解剖図鑑」苫米地英人著
人は一日の中で、喜怒哀楽の他にもさまざまな感情を繰り返しながら生きている。感情に生活が振り回されているといっても過言ではない。
しかし、認知科学者の著者は、自分の意志と関係なく生じる感情に振り回されないように生きるのは、実はとても簡単だという。
湧き上がる感情を抑えるのは難しいが、考え方ひとつで、感情を「エンターテインメント」「人生のスパイス」として味わうようにするというのだ。さらに、人生の目標達成のために、感情を上手に使うこともできると説く。
本書は、思いのままコントロールするために、複雑な感情の一つ一つを図鑑化して徹底解剖、それぞれを自由自在に操る方法を伝授してくれる生き方指南書。
例えば「後悔」。後悔とは、「過去の選択によっては、現実になっていた可能性のある世界(可能世界)」を想定し、それを現実と比較し、可能世界の方が良かったと感じることによって生まれる感情。
そもそも現実世界と可能世界を比べるのは無意味であり、ありもしない可能世界よりも現実世界に良い評価を下す方がはるかに前向きで健全であると、後悔という感情をコントロールするさまざまな方法を伝授してくれる。
感情には「恐怖」や「怒り」のように、もともと生命維持や種の保存のために必要だったが、現代ではほとんど必要ないネガティブなものと、親近感や感謝などポジティブなものがある。
四十余にも及ぶ双方の感情の一つ一つを取り上げ、「幸福」な人とはトランス状態にある人、楽しむべき「不安」と手放すべき「不安」があるなど、それぞれのコントロールや付き合い方を解説してくれる。
自分を振り回す感情の正体が分かるお薦め本。(誠文堂新光社 1400円+税)