日本の自称ジャーナリストは耳が痛いか、痛さを感じる耳をなくしたか

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「アウトサイダー」フレデリック・フォーサイス著、黒原敏行訳/角川書店

「ジャッカルの日」や「オデッサ・ファイル」、そして「戦争の犬たち」(いずれも角川文庫)などを私は夢中になって読んだ。その興奮を私はいまも忘れない。その著者の、これは自伝である。なぜ、インサイダーではなく、アウトサイダーなのか?

「ジャーナリストは絶対に支配階層(エスタブリッシュメント)の一員になるべきではない。誘惑がどれほど強くてもだ」と語るフォーサイスは「われわれの仕事は権力を監視することであり、そこに加わることではない」と断定する。そして、こう続ける。

「人々がますます権力と金と名誉の神に取り憑かれたみたいに仕えるようになっている世界において、ジャーナリストや作家はそこから距離をとらなければならない。手すりにとまっている鳥のように、世界で起こっていることを見つめ、心にとめ、精査し、解説する。けっして当事者の仲間になってはいけない。アウトサイダーでいなければならないのだ」

 特にここ日本で、耳の痛いジャーナリストや作家が多いだろう。いや、私には、ほとんどが痛く感じる耳をなくしているように見える。

 情報をとらなければならないからとインサイダーになって、そのまま批判精神をなくしてしまった自称ジャーナリストや自称作家が何と多いことか。

 フォーサイスは、東ドイツで会った国家保安省のリーダー格の男について、「この男は明らかに40すぎで、20年前にはナチスに仕えていただろうとわたしは踏んだ。ファシストからするりと共産主義者に転向したに違いない。秘密警察の人間というのはそういうもので、仕える相手は誰でもいいのだ」。

 この指摘は日本の官僚と官僚上がりの人間にそのまま当てはまる。彼らは「イデオロギーを問わず誰にでも奉仕する」のである。

 拙著「自公政権お抱え知識人徹底批判」(河出書房新社)で私は、いま、マスメディアにあふれているそうした“お抱え知識人”を、「敵にも味方にも武器を売る」武器商人にたとえ、その狡猾さを指弾した。実名を挙げて批判したが、この国における“お抱え知識人”の特徴は3つ挙げられる。

 まず、原発の必要性を強調して、電力会社の広告に出ること。次に、竹中平蔵を旗印とする新自由主義に賛成して「規制緩和」や「特区」を叫ぶこと。そして、自民党と連立を組む公明党の支持団体の創価学会をヨイショすることである。★★★(選者・佐高信)

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