夢の統合は消し飛びいまや解体の危機「岐路に立つEU」
「EU分裂と 世界経済危機」伊藤さゆり著
マクロ経済の観点から見れば明らかにEU残留が有利だったはずの英国。それがなぜ反対になったのか。
キャメロン前首相ら残留派は「より強く、より安全に、より豊かに」を掲げたが、本質は離脱による雇用への悪影響を強調する「恐怖作戦」。つまりプラスの未来ではなく既得権益層が自分の利益を手放さないための説得と受け取られたという。
また英国には、為替相場メカニズムやユーロ導入などでEUと距離を置いたことの成功体験もあった。加えて繁栄に取り残された層は移民の増加に不安と反感を抱いた。
現在、離脱ショックは懸念されたほどの悪化を伴っていない。しかし、先行き不透明感が払拭されるまでには相当な持久戦が必要だろう、と若手アナリストの著者はみている。(NHK出版 740円+税)