「果鋭」黒川博行著

公開日: 更新日:

 事は一本の電話から始まった。

「堀やん? わしや。飯でも食お。出て来いや」

 声の主は伊達誠一。着信音で起こされたのは堀内信也。2人はかつて大阪府警の刑事としてコンビを組んでいた。しかし、それぞれに不祥事を起こして警察を退職。シノギを求めて不動産業界に転じた。その後、堀内は暴力団ともめて刺され、辛くも一命を取り留めたが、シノギも女も失った。おまけに左足に障害が残り、杖が手放せなくなって、全てに投げやりになっていた。

 伊達はそんな元相棒を呼び出し、うなぎ屋でもうけ話を持ち掛ける。知り合いのパチンコホールのオーナーが脅迫されているという。背後には元店長がからむ機械の不正操作があるようだ。

 堀やん、誠やんの元刑事コンビが体を張ってパチンコ業界の闇に挑むピカレスクロマン。2人が動くたびに、腐った業界の裏が見えてくる。業界団体、暴力団、警察までがからみ、私腹を肥やそうとする輩がうごめく。

 生きる意欲をなくしていた堀内の血が再び湧き立ち、鉄筋を仕込んだ杖を振るって、襲い来る相手をたたきのめす。血を流してもひるまない。大いに食べ、飲み、打つ。ワルでタフな2人の生きざまが痛快。(幻冬舎 1800円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  2. 2

    清原果耶ついにスランプ脱出なるか? 坂口健太郎と“TBS火10”で再タッグ、「おかえりモネ」以来の共演に期待

  3. 3

    だから桑田真澄さんは伝説的な存在だった。PL学園の野球部員は授業中に寝るはずなのに…

  4. 4

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  5. 5

    「ニュース7」畠山衣美アナに既婚者"略奪不倫"報道…NHKはなぜ不倫スキャンダルが多いのか

  1. 6

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 7

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 8

    ドジャース大谷 今季中の投手復帰は「幻」の気配…ブルペン調整が遅々として進まない本当の理由

  4. 9

    打撃絶不調・坂本勇人を「魚雷バット」が救う? 恩師の巨人元打撃コーチが重症度、治療法を指摘

  5. 10

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した