「果鋭」黒川博行著
事は一本の電話から始まった。
「堀やん? わしや。飯でも食お。出て来いや」
声の主は伊達誠一。着信音で起こされたのは堀内信也。2人はかつて大阪府警の刑事としてコンビを組んでいた。しかし、それぞれに不祥事を起こして警察を退職。シノギを求めて不動産業界に転じた。その後、堀内は暴力団ともめて刺され、辛くも一命を取り留めたが、シノギも女も失った。おまけに左足に障害が残り、杖が手放せなくなって、全てに投げやりになっていた。
伊達はそんな元相棒を呼び出し、うなぎ屋でもうけ話を持ち掛ける。知り合いのパチンコホールのオーナーが脅迫されているという。背後には元店長がからむ機械の不正操作があるようだ。
堀やん、誠やんの元刑事コンビが体を張ってパチンコ業界の闇に挑むピカレスクロマン。2人が動くたびに、腐った業界の裏が見えてくる。業界団体、暴力団、警察までがからみ、私腹を肥やそうとする輩がうごめく。
生きる意欲をなくしていた堀内の血が再び湧き立ち、鉄筋を仕込んだ杖を振るって、襲い来る相手をたたきのめす。血を流してもひるまない。大いに食べ、飲み、打つ。ワルでタフな2人の生きざまが痛快。(幻冬舎 1800円+税)