世界を吹き荒れる大衆扇動の嵐 「ポピュリズム」とは何か
「ポピュリズムとは何か」ヤン=ヴェルナー・ミュラー著 板橋拓己訳
「自分たちだけが真正な人民を代表する」という主張をかたくなに繰り返すポピュリスト。だから自分が支配する行政府は人民によって支配されており、反対する者はすべて人民に歯向かう存在だ。そうトランプは主張する。しかも自分は人民の真正な意思の執行者に過ぎないからこそ、自分は「いかなる政治的責任も負わない」と彼らは考えているのだ。
冒頭の日本版序文でこう喝破するのはドイツ生まれのアメリカの政治学者。欧米双方を知る立場で「リベラル」と「ポピュリズム」は欧米でまったく違う意味だという。米国で「リベラル」は「社会民主主義」の別名だが、欧州では「多元主義の尊重」や「均衡と抑制」、つまり中道派の理念を指す。
また米国の「ポピュリズム」は社会民主主義の「非妥協的なパターン」だが、欧州では「反エスタブリッシュメント」になる。要は基本概念からして混乱しているわけで、そこから整理して議論を展開してくれるのはありがたい。(岩波書店 1800円+税)