「盤上の向日葵」柚月裕子著
埼玉県の山中で、死後3年が経過したと思われる推定年齢40~50代の男性の白骨死体が発見された。駒袋といわれる袋に入った将棋の駒が遺体の肋骨付近から見つかり、しかも、その駒が初代菊水月作による600万円は下らない高価なものであったことから、遺体と将棋の駒の関係性が疑われた。
捜査にあたるのは、かつてプロ棋士を目指していた経歴を持つ新米刑事の佐野と、たたき上げの刑事・石破。白骨化した遺体と将棋の駒との関係を解く鍵はどこにあるのか。
ふたりは将棋界の注目の的となる竜昇戦の舞台である山形県天童市へと向かうのだが……。
昨年「孤狼の血」で第69回日本推理作家協会賞を受賞した著者による、デビュー10年目の会心作。所有者が限定されている有名な将棋の駒の行方を確認しながら捜査を進めていく刑事側のストーリーと並行して、母親に先立たれ父親に虐待されながらも、抜群の将棋のセンスで自力でプロの道へ駆け上った青年の物語が語られていく。
500ページを超える長編ながら、一手ずつ駒を進める将棋と一歩ずつ真相に近づくミステリーという組み合わせで、一気に読ませる。
(中央公論新社 1800円+税)