「悪の箴言」鹿島茂著
「凡人は、概して、自分の能力を超えることをすべて断罪する」(ラ・ロシュフコー箴言集)
世界の1%の金持ちが99%の貧乏人を支配しているというが、才能の格差の比率もほぼ同じである。だが、所得格差と違って、99%の凡人が1%の非凡人を支配している。民主主義というのは99%の凡人の考えで決定されることが多いからだ。
シドニー・ルメット監督の「十二人の怒れる男」のように1%の非凡人が99%の凡人を説得して真実に目覚めさせるのが民主主義だが、実際にはトランプがアメリカの大統領になるなど、メディオクラシー(凡人支配)が21世紀の世界を覆いつつある。他にパスカルなど、著者が集めた「言葉の短刀」の切れ味が堪能できる一冊。
(祥伝社 1800円+税)