「流出した日本美術の至宝」中野明著
日本の貴重な美術品が明治維新の混乱の中、海外に流出した。
その原点は、政府による廃仏毀釈。中でも興福寺の五重塔を取り壊すことで落札が行われ、さらに焼き払おうとしたが、類焼を恐れる周辺住民の訴えで、取りやめになったという。
美術品を救ったのが、ものを見る目を持った外国人たちで、たとえば、アーネスト・フェノロサは日本美術の研究者としても名高く、その収集した国宝級の作品はいまではボストン美術館に収蔵されている。現代に目を移すと、若冲ブームの火付け役となったジョー・プライスもその一人だ。
日本では捨て値同然だった古美術品に群がる外国人コレクターたちが繰り広げた美術品争奪戦を、当時の記録をたどって読み解く。
(筑摩書房 1700円+税)