「偽りの薬」河内敏康、八田浩輔著
巨大製薬企業・ノバルティスファーマによる臨床試験データ改ざん事件を追ったルポルタージュ。
同社は、2000年に発売した降圧剤「ディオバン」(一般名バルサルタン)が「降圧を超える効果」があることを証明するため、東京慈恵会医科大学など全国5大学の研究チームで臨床試験を実施した。
一方で、同社はそれらの大学に総額11億円を超える奨学寄付金を贈与する。チームによって、同薬が脳卒中や狭心症を抑制する効果などが他の降圧剤よりも優れているという論文が発表される。その論文を販売促進に利用した同社は累計で1兆円以上も売り上げ、莫大な利益を得た。
新聞記者の著者らが、一通の告発メールをきっかけに、巨大企業と大学病院の癒着を暴いていく過程を克明に描く。
(新潮社 550円+税)