「眩(くらら)」朝井まかて著
絵師・北斎を父に持つお栄は、物心ついたときから絵筆を握ってきた。同業の男と所帯を持ったものの、お栄の頭のなかには絵のことしかなく、やがて離縁。出戻って父の工房で働きながら、自分らしい絵、自分にしか描けない色を求めて模索を続けるが、思うような絵はなかなか描けない。
そんなある日、お栄は「八犬伝」の挿絵で売れっ子に名を連ねる兄弟子の善次郎(渓斎英泉)もまた、「北斎の再来」以上の存在になれないことに苦しんでいることを知る。数日後、長崎の阿蘭陀商館で働く絵師・川原が工房を訪ねてくる。川原は、阿蘭陀国からの注文だといって、北斎に江戸市中の暮らしを「西画」で描いてほしいと言い出す。
女絵師・葛飾応為の生涯を描く時代長編。 (新潮社 710円+税)