「日本の腰痛誤診確率80%」北原雅樹著
肩や腰の慢性的な痛みに悩まされている日本人は多い。どうせ治らないと思いつつ、せっせとマッサージに通ったり、湿布を貼ってやり過ごしているのではないだろうか。しかし、そんな悪あがきは今日でやめにするべき。なぜなら、慢性痛の原因は痛い箇所にはない場合がほとんどだからだ。
痛みの専門医である著者は、痛みは「機械的な不調」と「機能的な不調」の2つに分けて考えなければ改善が難しいという。パソコンの不調の原因には、ハードディスクの破損などの機械的な不調と、アプリケーションが作動しない機能的な不調がある。これを痛みに置き換えると、前者が急性痛で、後者が慢性痛ということになる。そして、慢性痛には脳の機能不全が関係しているという。腰と脳など無関係のようだが、腰が痛いとき、その痛みは腰が感じているのではない。電気信号が末梢神経から脊髄を通り、脳に伝えられたさまざまな情報が統合されて「痛みである」と感じているのだ。しかし、脳に機能不全が生じると、腰に機械的な不調がなくても「痛い」と思い込まされてしまう。
脳の機能不全はストレスや不安などの心理的要因、過労や栄養不良などの身体的要因、そして孤独などの社会的要因によって、簡単に引き起こされてしまう。つまり、慢性痛の原因は患部にあるとは限らず、その多くは生活習慣を改善することで軽減される可能性が高いのだ。
本書では、運動や食事、睡眠、入浴、いびきなどを見直すことで慢性的な痛みを改善するポイントを解説。欧米と比較して慢性痛対策がお粗末な日本の医療にも警鐘を鳴らしている。痛みの正体を知り、長引く痛みから解放されよう。
(集英社インターナショナル1400円+税)