「紋切型社会」武田砂鉄著
誰もが何げなく使っている言葉に潜む社会の欺瞞をあぶり出すコラム集。
「五体不満足」の乙武洋匡氏と、薬害エイズ事件原告の川田龍平氏。同い年の2人だが、前者は乙武「君」と呼ばれ、後者は川田「さん」と呼ばれるのはなぜか。乙武氏が、障害者は「君たちが決めつけてくるほど不幸じゃないよ」と快活に放つメッセージと、それを受け取る側の承諾が早い段階でスムーズに交わされたからこそ、彼には親しみの証しとして「君」という敬称が安定的に使われたと説き、障害の深刻度を「最適化」する世の中を斬る。
他にも、結婚式で新郎新婦が読み上げる手紙の「育ててくれてありがとう」「国益を損なうことになる」など。はびこる紋切り型言葉遣いを解きほぐし、世の中にまかり通る嘘を暴く。
(新潮社 590円+税)