「ことば事始め」池内紀著
「うるさい」を三省堂の「新明解国語辞典」で引いてみた。「〇一いつまでも・(断続的に)耳や身につきまとうため、不快でたまらない感じだ。〇二自分にとってはどうでもいい事をわずらわしいまでに、強制(固執)したり必要以上に厳しかったりするので、出来るなら相手から逃避したい気持だ」とある。
同じ「うるさい」でも対応は別で、〇二ならさっさと逃げ出すに限る。適当に受け流して、「急ぎの用」を思い出せばいい。 〇一が犬の吠え声だった場合、耳をすまして「犬が何を主張したがっているのか」を推察する。おねだり、不満、甘えなどで微妙に声調が異なる。
他に、同じアメ玉でも「なめる」と「しゃぶる」の違いなど、どうということのない言葉の微妙なニュアンスを表現した、含蓄のあるエッセー。
(亜紀書房 1600円+税)