「お寺の掲示板」江田智昭著
お寺の門前の掲示板の言葉に感じ入った経験がある人も多いはず。宗派で決まった標語を張り出す場合もあるが、あれらの言葉のほとんどは住職や関係者が考えて書いているものだという。中には書き手の思いがあふれユニークなものもある。
本書は、SNS上で催された「輝け!お寺の掲示板大賞」に投稿されたそんなユニークな作品を集め、紹介するビジュアル本。
大賞作は「おまえも死ぬぞ 釈尊」(岐阜 願蓮寺)。シンプルでありながらインパクト大で、一度目にしたら忘れられない。
釈尊はここまでストレートには言ってはいないが、この標語を書いた住職は、原始仏典にある「生まれた者が死なないということはあり得ない」という言葉を直接的な物言いにしたようだと、自らも僧侶であり、大賞を企画した著者は解説する。
他にも「人の悪口はうそでも面白いが 自分の悪口はほんとでも腹がたつ」(愛媛 龍澤寺)や、「何故か叱る人は少くなり 怒る人は多くなり」(京都 了峰寺)など、何度も噛みしめたい味わい深い言葉が並ぶ。
多くは仏の教えへの理解を広めようとする「掲示伝道」であり、仏の教えがもとになっているのだが、中にはノンフィクション作家の久田恵さんの言葉「言っていることではなく、やっていることがその人の正体」(東京 妙円寺)など、著名人の言葉を掲げるお寺もある。
「NOご先祖,NO LIFE」(京都 龍岸寺)や「お墓参りは、ご先祖様とのオフ会。」(広島 超覚寺)など、時代に寄り添ったものから、仏はあなたの行いを見ているということを一言で表した「ばれているぜ」(大分 雲西寺=表紙)など現代書家ばりの書道アート的掲示物まで実に多彩。
読んで納得、見て楽しい、仏教がちょっと身近に感じられるお薦め本だ。 (新潮社 1000円+税)