「長寿と画家」河原啓子著
ピカソは付き合った女性のエネルギーを吸い上げるようにして素晴らしい絵を描き、富も名誉も思いのままだったが、「老い」は別だった。内からこみあげるエネルギーの減退を感じ、「20歳若くなれるなら、なんでもあげよう」とつぶやく。91歳で死ぬが、その半年前に描いた「自画像」は絶望を見つめるようなまなざしをしている。
ロシア生まれのユダヤ人、シャガールは、亡命したアメリカでFBIの監視のもと、不自由で孤独な生活を送った。晩年は散歩や体操を欠かさず規則正しい生活をして97歳まで生きた。彼の絵が鮮やかで楽しげなのは、苦い思い出から逃れる護身術だったのかもしれない。
長生きした15人の画家の最晩年から、その生き方と作品を読み解く。
(フィルムアート社 1800円+税)