「懐かしいお菓子武井武雄の『日本郷土菓子図譜』を味わう」伴田良輔ほか著
武井武雄氏(1894~1983年)は、「コドモノクニ」や「キンダーブック」などの子供雑誌で活躍した「童画家」。氏の作品とは知らずとも、幼い頃にお世話になった人も多いはず。子供の絵だけでなく、版画や詩、デザイン、そしてコレクターとしても活躍したマルチアーティストだった。
「日本郷土菓子図譜」は、氏が各地の友人知人から贈られたり、自身が買い求めて楽しんだ郷土菓子を水彩画でスケッチして記録した画帖で、手作りの私家本である。
本書は、長らく非公開で知る人ぞ知る存在だったこの全3巻の図譜に描かれたスケッチを紹介するビジュアルブック。
氏がお菓子の記録を始めたのは1936(昭和11)年7月からで、戦争などで何度か中断するものの、1958(昭和33)年11月まで22年間続いた。その間に、食べて、描いた郷土菓子は169種類におよぶ。
例えば昭和13年3月7日に入手した「大阪やぐらおこし」(寺島總本家)。茶箱を模したような箱を紐で縛った凝った外装をはじめ、個装のデザインや、お菓子そのものの姿まで丁寧にスケッチ。さらに、寸法や送り主のデータの他に「堅固なること板の如し 粟おこしにて堅める 飴の量多く 国産タフィの趣あり 味よし」と食べた感想まで詳しく記されている。