「果てしなき輝きの果てに」リズ・ムーア著、竹内要江訳
これはまず、姉妹小説だ。姉のミカエラ(ミッキー)と妹のケイシーは、幼いときから祖母のジーに育てられる。裕福な暮らしではないが、それなりに幸せな幼少時代を過ごしてきた。物静かな姉と、活発な妹の、さまざまな姿が回想の中できらきらと描かれていく。
この幼い姉妹の蜜月がよく、その描写が群を抜いているが、それを読んでいると、なんだか胸が痛くなってくる。というのは、いま、姉妹の状況が激変しているからだ。妹のケイシーはドラッグに溺れ、娼婦となっているのだ。警官になった姉のミッキーはパトロールの車の中から時折、街角に立つ妹を見る。そんな関係になっている。
だから本書は、ドラッグがいかに人の心をむしばんでいくかという薬物依存を描く小説であり、姉のミッキーを取り巻く組織の腐敗を描く警察小説でもある。
物語は、線路脇でドラッグ中毒者の死体が発見されるところから始まり、行方がわからなくなった妹と、犯人を追いかける姉の苦闘を描くかたちで進んでいく。したがって本書はもちろんミステリーである。あ、そうか。詳しくは書けないが、これは家族小説でもある。
姉の4歳の息子トーマスの父親は誰なのか、をすぐに明らかにしないなど、構成がいいので、どんどん物語に引きずり込まれていくのも特筆もの。脇役などの人物造形もよく、一気読みの傑作だ。
(早川書房 2200円+税)