第2波が来る前に読んでおきたい感染症本特集
「人類対新型ウイルス」トム・クイン著 塚﨑朝子補遺ほか訳
新型コロナウイルスの流行で、感染症に関心を持つ人が増えている。そこで今回は、コロナクライシス、パンデミック、人類とウイルスの闘いの歴史、国際政治から見た感染症、国内外のニュースの動向をまとめたコミックの5つの視点から、いま一番ホットな感染症関連本を5冊ご紹介!
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新型インフルエンザの世界的大流行を受け緊急出版されたのが、今や予言の書といわれる前著「人類対インフルエンザ」に、医学ジャーナリストによる新型コロナウイルスの最新情報を加えた章を補遺として加えたこの本。社会史研究家で英国のジャーナリストである著者は、10年前から変異を繰り返して人類を襲うウイルスの脅威を訴え、今後世界的な混乱が生じる可能性があることを提示してきた。
コロナ流行後のいま、改めて震撼させられるのは、ウイルス性のパンデミックにおいて第2波という現象は共通して起こり得るものであり、第2波はウイルスの変異により毒性が増すことで発生して人に感染しやすくなり、宿主を殺す能力も上がるという指摘だ。
うっかり手遅れとならないよう、起こり得る事態に備えてご一読を。
(朝日新聞出版 850円+税)
「コロナクライシス」滝田洋一著
日経新聞編集委員で、ワールドビジネスサテライトのキャスターとしてお馴染みの著者による、新型コロナウイルスの解説本。爆発的流行に至った経緯とその問題点を整理し、コロナ後の経済と社会の変化について考察している。
当初コロナは、局地的・限定的流行にとどまるだろうとする説が流布していた。ところが隠蔽と慢心による楽観説は、あっという間に覆され、中国はもちろん欧米諸国も次々とロックダウンに追い込まれた。日本もお粗末な危機管理が次々とあらわになり、国民は忍耐を強いられている。
著者は、20年後半にコロナが終息して封鎖が徐々に解除されても、20~21年の世界のGDPの損失は約9兆ドルに達することを指摘。これは日本とドイツのGDPの合計を上回る額であり、衝撃の大きさに唖然とさせられる。
(日経BP 850円+税)
「世界史を変えたパンデミック」小長谷正明著
都市封鎖の起源となった黒死病、ナポレオンのロシア撤退の理由となったチフスなど、歴史を振り返れば、疫病は社会を激変させるきっかけとなっている。本書は、歴史好きの医師である著者が、医学的・歴史的資料をもとにパンデミックが社会にもたらした影響を検証したもの。
たとえば、日本の幕末期において江戸幕府を揺るがしたのは、コレラだった。ペリーが最初に来航した長崎でまずコレラが発生し、その後、大阪で1万人、江戸では3万~4万人の死者を出す中、人心は乱れ、治安も悪化し、コレラが幕末の歴史を動かす底流となったというのだ。また第2部では、ワクチンやペニシリンの開発など流行病に立ち向かった人々の歴史を取り上げている。
疫病に襲われるたび、何度も克服してきた人々の歴史に励まされる。
(幻冬舎 800円+税)
「人類と病」詫摩佳代著
人々の健康を脅かす病は、医学の進歩にもかかわらず、絶えず脅威であり続けてきた。
ひとつの病が克服されても別の病が登場することが脅威であるというだけでなく、治療法が確立しても、地域や国力の差によってそこにアクセスできない人が生まれたり、製薬会社の動向が絡んだり、世界経済の動きが影響したりといったように、国際社会のさまざまな要素が人類と病との闘いに影響を及ぼしている点は見過ごせない。
本書は、WHOを中心とする国際的な保健協力の枠組みがなぜできたのか、その原点をひもときながら、人類が病と対峙する上で欠かせない保健協力の必要性を訴える。
さらに感染症だけでなく、生活習慣病や喫煙を巡る問題、健康への権利を巡る攻防などにも言及。国際的な保健協力への静かな情熱が伝わってくる。
(中央公論新社 820円+税)
「コロコロ日記」ヒグマルコ作
今年も半分を過ぎようとしている今、年頭から押し寄せてきた新型コロナの膨大なニュースをどのくらい覚えているだろうか。とんでもないニュース続きで、もはや前世並みに思い出せなくなっている人もいるかもしれない。
そこで参考にしてほしいのが本書。国内外のいつどこでどんなことが起きたのか、新型コロナ関連のニュースを時系列に並べてイラストで解説している。
たとえば、中国人観光客が日本でマスクを爆買いしていたのが1月23日ごろ、いち早く警鐘を鳴らしていた中国人医師が亡くなったのが2月7日、フィリピンパブにいった罹患男性が死亡したのが3月18日、自粛ムードをよそに昭恵さんが花見をしたのがばれたのが3月26日ごろだとか。
残念なニュースも、ユーモラスなイラストでどうにか救われるかも。
(リーダーズノート出版 1000円+税)