「美術展の都合な真実」古賀太著
著者によると、日本の美術館や博物館、展覧会は国際的に見てかなり歪んでいるという。本書は、そんな美術展の裏側を明かす業界事情本。
近年、話題の展覧会はどこも大混雑だが、年間の総入場者数は海外の美術館の方が圧倒的に多い。つまり海外では、美術館や博物館はその所蔵作品を見に行く場所だが、日本では国内外から作品を集めた企画展=一過性のイベントを見る場所になっているからだという。企画展でも、なぜ個展ではなく、海外の大美術館の所蔵品を展示する「○○美術館展」が多いのか。それらの企画展を主催するのが新聞社なのはなぜか。そしてチケット代の利権構造まで。
美術展の舞台裏を解説すると共に、足を運ぶべき美術館をアドバイスしてくれる美術ファン必読の書。
(新潮社 760円+税)