「暦と暮らす」宇多喜代子著
梅雨は中国の揚子江以南から朝鮮半島の南部、日本列島に降る雨で、欧米にはない。熱帯地方の雨期とも違うため、該当する英語がなく、「BAIU」と表記するとか。揚子江以南で梅の実が熟すころに降るため、江戸時代には「梅の雨」と書いていたが、明治以降、「梅雨」と書くようになった。田村木国の句に「家一つ沈むばかりや梅雨の沼」がある。長期間降るだけでなく、雨量が多く雨脚も強くて、沼の水かさが増えた様子が伝わってくる。豪雨によって河川が氾濫することを「出水」といい、「牛小屋に出水の跡のまざまざと 棚山波朗」という句もある。
他に「短夜」「葭戸(よしど)」など、日本の暮らしを彩る季語と季節の俳句を紹介。たまには一句ひねってみるのもオススメ。
(NHK出版 1500円+税)