「TKマガジン vol.01」レゾンクリエイト 2200円+税
複雑心奇形という、生きて生まれる確率3%の心臓病とともに生まれ、その後、病院のミスにより硬膜下血腫(脳に血がたまった状態)になり人工の管を入れる人生を送るTKことミウラタケヒロさん(15歳)。生まれながらにして「平均寿命15~18歳」と伝えられていたこの少年の人生を描くとともに、彼と乙武洋匡氏、キングコング・西野亮廣、ロボットコミュニケーター・吉藤オリィ氏らとの対談が収録されている。
短時間であれば立って歩けるが、基本的には車椅子で移動する彼が行動的にさまざまな場所へ行き、人と会う様が描かれている。「マガジン」と題されているだけに、コラムあり、スポーツに挑戦する企画ありと盛りだくさんなのだが、とにかく笑顔の人が大勢登場するのが特徴だ。
TKを中心に多くの人が集まるが、自分の13~15歳の時代と比べたら信じられない行動力である。彼は「えんとつ町のプペル」という絵本を作った西野に「外出困難な子どもたちのための『光る絵本展』を開催してください」というビデオレターを送った。「光る絵本展」とは同書にまつわる展覧会のこと。すると西野はその要望に応えてくれたのだ!
日ごろから人間のどす黒さや狡猾さについて徹底的に糾弾してきた私は、最近でも「盗めるアート展」という企画についても新聞で批判的に書いた。これは、7月10~19日にかけて行われるアート展で、来場者は展示作品を盗んでもよい、とされた。
「盗んでよいものとして作品が展示される時、アーティストはどのような作品を展示するのか? 鑑賞者と作品の関係性はどうなるのか?」という趣旨で開催された。
現代アートにおける新たな取り組みだったのだが、主催者としては開催期間中に少しずつ作品が減少していく様も含めてアートにしたかったのだろうが、開場10分ですべての作品が盗まれた! 見事なまでにその期待は粉砕された。
こうした修羅の国のような現世だが、本マガジンを読むと、「あぁ……世の中には善意があったんだ」ということが分かる。TKが乙武氏に「性」を聞いたり、西野にモテる方法を聞くなどするが、これに両氏もキチンと答えている。
最近心が荒んでいるな……と思った人は読むと途端に浄化された気持ちになるだろう。「24時間テレビ」的なお涙ちょうだいではない障害者のリアルが描かれている。ただし、買うには通常の書店ルートではない。https://kodoentk.thebase.in/へのアクセスが必要だ。
★★★(選者・中川淳一郎)