「黄金の60代」郷ひろみ著
1972年、「男の子女の子」で歌手デビュー、愛らしいルックスと、鼻にかかった独特の声で人気アイドルになった郷ひろみ。60代半ばを迎えた今も、スターであり続けているのには理由がある。
彼はかなり前から60代を「人生最高の時期」と考え、60代で輝くために準備をしてきた。毎日のようにボーカルトレーニングを行い、週3回は専属のトレーナーについて体を鍛える。
スポーツマッサージも欠かさない。日頃からなるべく階段を使い、靴や靴下をはくときは片足立ちを意識する。箸も歯ブラシも左手で使って左右のバランスをとる。大好きな酒は50代でやめた。時間があれば本を読む。はた目にはストイックとも映る努力を、当たり前のように続けている。
郷ひろみが日頃考えていること、感じたことを書き、5年にわたって雑誌に連載したエッセーが、この一冊にまとまった。「死ぬまで発展途上」「緊張感を愛する」「何事も突き詰める」「暇を嫌う」など、タイトルからポジティブな人生観が見て取れる。
「朝に体と向き合う」「食事は腹七分目」「発汗に気を配る」など、健康管理への並々ならぬ関心も伝わってくる。あのスリムなボディーもキレのある動きも、一日にして成らず。
アイドルがうまく年を重ねるのは難しい。郷ひろみはトップアイドルになってもそこで満足しなかった。思うように歌えない、踊れない。自分に欠けているものを自覚して、高みを目指した。40代半ばの3年間は日本での活動を休止して、歌の勉強のためにニューヨークに滞在。世界でも指折りのボーカルティーチャーにレッスンを受けた。
引き際をどう見定めるのか。「人に肩を叩かれて、『ひろみさん、もう引き際じゃない?』とはいわせない。僕は自分で自分の肩を叩く」と書いている。
郷ひろみは60代を全力疾走中だ。郷ひろみであり続けるために。
(幻冬舎 1500円+税)