「ただいま神様当番」青山美智子著
水原咲良は、いつだって楽しいことは自分の目の前を素通りしていくと思っていた。出勤時、いつものバス停の台にCDジャケットの落とし物があった。欲しかったキュービックのニューアルバム初回限定盤だ。ラッキー! 翌朝、腕に「神様当番」という文字が書かれているのに気がついた。背後で見知らぬお爺さんが「お当番さん、みーつけた ワシを楽しませて?」と言い、小さくなって咲良の左の手のひらに入り込んだ。
翌日、バスでひとつだけ空いていた優先席におじさんが座った。次のバス停で妊婦が乗ってきた時、咲良の左手がおじさんの腕を掴んで、席から引きずりおろした。〈一番 水原咲良〉
欲しいものと引き換えに「神様当番」になってしまった5人の物語。神様に振り回されるうち、自分を見つめなおす登場人物たちの姿に心が温まる。
(宝島社 1480円+税)