最高学府の頂点 東京大学"解体”本特集
「東大思考」西岡壱誠著
誰もがその名を聞けば一目置いてしまう東京大学。言わずと知れた日本の最高学府の頂点であり、卒業生の多くが日本の中枢で活躍している。しかし、一方で東大生ならではの悩みもあるようだ。そんな東大にさまざまな角度からアプローチした本を紹介しよう。
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現役東大生の著者の高3時の模試の偏差値はなんと35。毎日何時間も勉強しているのに、一向に成績が上がらない「典型的なバカ」だったが、2浪の末に合格できたのは、頭のいい人のやり方、思考法を「パクりまくった」からだという。
暗記力や読解力、説明力、発想力、そして適応能力など頭の良さにも各タイプがある。どれも生まれつきだと思われがちだが、これらは誰でも身につけることができる。東大生は、日常生活でも我々と異なる「思考回路」で物事を考え、それがある種のトレーニングとなって、彼らの頭の良さがつくられているそうだ。
本書は、「暗記しなくても記憶できるようになる」思考回路をはじめ、東大生の多くに共通している5つの思考回路を解説。仕事や日常生活にも活用できる頭のトレーニング法だ。
(東洋経済新報社 1500円+税)
「東大という思想」吉見俊哉、森本祥子編
知的「ブランド」としての東大は、いかに構築されてきたのか。
1877年、幕府天文方を起源とする大学南校と、天然痘対策で設置された種痘所が発展した東校との合併によって東京大学の基礎が形づくられた。当時、存在した「本校」が儒学と国学の旧勢力の内紛によって廃止されたため、東京大学創立は日本の学知全体が西洋化していく契機となった。
当時は、高等教育の頂点となる存在ではなかったが、9年後、旧東京大学を核に官立専門学校が統合され、知の中枢を担う機関として帝国大学が設立される。
日本人初の物理学教授・山川健次郎をはじめ、工学教授ヘンリー・ダイアーら、日本の近代学問の基礎を築いたり、学問領域を確立したさまざまな東大研究者たちの足跡をたどりながら、その業績の意義を語る論考集。
(東京大学出版会 3500円+税)
「東大なんか入らなきゃよかった」池田渓著
「最高の学歴」を持つ東大生は、世間では、頭が良く、「人生の幸福が約束されている」と思われがち。だが、自身も東大卒である著者によると、東大に入ったがゆえに「生きづらさ」を感じている卒業生も多いという。
そんな人たちのエピソードを集めた「裏東大本」。
東大生には天才型・秀才型・要領型の3タイプがあり、ビジネスの現場で使えないと言われてしまうのが合格ラインぎりぎりで滑り込んだ要領型。東大に入ることで燃え尽き、メガバンクに就職したものの、うつになってしまった人や、東大生なんだから分かるだろうと、仕事も教えてもらえないいじめに遭った地方公務員、漫画家になったものの今は高卒と偽って派遣の警備員の仕事に従事する人など。
もうひとつの東大生たちの姿に学歴とは何かと考えさせられる。
(飛鳥新社 1364円+税)
「オレの東大物語 1966―1972」加藤典洋著
昨年亡くなった文芸評論家が死の2カ月前につづった青春回想録。留年を含めて6年間を過ごした「クソだった」東大での日々を振り返る。
山形出身の氏は、1966年に現役合格。同郷の女性の案内で、新宿界隈のジャズ喫茶に入り浸るようになった氏は、当時、街に充満していたヒッピーイズムの洗礼を受ける。大学では文芸サークルに所属し、発表した小説が高い評価を受け、後に結婚することになるA子とも知り合う。
そんな日々が2年生の秋に一転。それまで徹底して非政治的人間だった氏が、羽田闘争への参加を機に政治に目覚めたのだ。
一方で、希望通り文学部仏文科に進級したものの、駒場から本郷のキャンパスに足を踏み入れた途端、拒否反応が起き、休学。友人を頼って大阪の釜ケ崎で暮らし始める……。
(集英社 1600円+税)
「東大脳クイズ」QuizKnock著
現役東大生の正解率が添えられ、東大生とのバトルが楽しめるクイズ本。
たとえば「スポーツ」ステージ。「モータースポーツで、最前線のスタート位置を何という?」(東大生正解率5%)、「世界記録を計35回も更新し『鳥人』と呼ばれた、ウクライナの棒高跳び選手は誰?」(同0%)など、本紙読者なら難なく答えられそうな質問も、東大生にはやや難しいと知りニヤリ。
一方で、理系問題の「ヘリウム、ネオン、アルゴンなど、元素周期表で第18族に分類される元素を総称して何という?」(同80%)や、「ことば・文学」問題の「晋の左思が書いた『三都賦』が飛ぶように売れたせいで紙の値段が上がったという故事にちなむ、本がたくさん売れることを表現したことばは何?」(同80%)など東大生には楽勝でもこちらには難問も。全348問で東大生と勝負!
(三笠書房 740円+税)