「宇宙考古学の冒険」サラ・パーカック著 熊谷玲美訳
人知れず地下に眠っている遺跡を発見・発掘する考古学の世界は、この数十年で格段の進化を遂げている。特にホットなのが、人工衛星から送られてくる画像データを分析して遺跡の発掘につなげる「宇宙考古学」の分野だ。本書は、宇宙考古学の第一人者で、2016年に衛星画像から遺跡を探すクラウドソーシングのプラットフォーム「グローバルエクスプローラー」を作り上げた考古学者による、宇宙考古学紹介の書。高解像度の映像が安価に手に入るようになったおかげで、遺跡の発見の形は大きく変わった。
本書の中でも特に興味深いのが、一般庶民でも宇宙考古学の発見に参加できるクラウドソーシングの仕組みを解説している第12章。学生やテクノロジーに詳しい人はもちろんのこと、家から出ることが難しいけれど時間と好奇心はたっぷりある高齢者も考古学の発見に貢献することができると著者はいう。
人間が築いた文明の栄枯盛衰がどのように起こり、どのように新たな歴史が上書きされていくのか。地層を一枚一枚めくるようにして現れた破滅した世界から、私たちが学べることは思いのほか多そうだ。
(光文社 2400円+税)