「『現代優生学』の脅威」池田清彦著
高度な社会の実現を目的に「優秀な人間の血統のみを次世代に継承し、劣った者たちの血筋は断絶させるか、もしくは有益な人間になるよう改良する」――こうした「優生学」の研究に強く影響されたナチスは、障害者の「断種」やユダヤ人の大量殺戮(さつりく)を決行。戦後、その反省から優生学の研究はタブーとなった。
しかし、中絶を助長する出生前診断や重度障害者や終末期の高齢者への支出削減の動きなど、近年、優生学的な傾向を持つ考えが多方面で顕著になりつつある。こうした潮流は、旧来の優生学から離れ、「生産性のない人間を直接淘汰する」という過激な方向へ向かいつつある。
優生学の歴史を振り返り、コロナ禍で一層顕著になりつつあるこうした「現代優生学」の危険性を説く警世の書。
(集英社インターナショナル 902円)