「キリギリスの年金」明石順平著
年金財政の危うい現実を明らかにする警世の書。まずは「老後2000万円問題」の発端となった報告書を検証。モデルケースでは介護費用などの支出を考慮しておらず、また夫婦や厚生年金受給者を想定しているため、現実はさらに厳しいと指摘する。
一方で、昨年行われた年金財政検証を多くのデータを提示して分析し、検証は、賃金も物価も大きく伸びることを前提にした実現不可能な楽観的な数値で、まったくあてにならないと断言。賦課方式ゆえに年金がゼロになることはないが、このままでは一生働くことを前提に考えなければならないという。
労働者はアリのように働いてきたが、為政者が目先の利益を優先し、「少子高齢化」という「冬」に備えてこなかったために陥った年金の不都合な事実を告発する。
(朝日新聞出版 850円+税)