「万葉と沙羅」中江有里著
一橋沙羅は週1回登校すればいい通信制の高校に入学したが、生活が昼夜逆転しているため、なかなか朝、起きられない。母に起こされてしぶしぶ登校した日、小走りの男子生徒の走り方に見覚えがあるのに気づいた。ずっと隣に住んで、保育園も一緒だった近藤万葉だった。父の転勤で引っ越したということだったが、実は近くに住んでいた。
母が万葉の叔父がやっている古書店を教えてくれたので行ってみると、万葉がいる。「ねえ、本選び、手伝ってくれないの」と言ったら「目が合った本にすれば」と。目が合ったのは「失われた時を求めて」だった。
幼馴染みに刺激されて新しい本と出合う少女の物語。
(文藝春秋 1815円)