「喉の奥なら傷ついてもばれない」宮木あや子著
明日香は、理由を見つけては5歳の娘を叱りつけ、全裸にして家の外に出す。かつて自分が母親からそうされていたように。
そんなある日、明日香はショッピングセンターで明良と17年ぶりに再会する。17年前、中学生になっても、毎日のように全裸で庭に出される明日香を心配して、一緒に駆け落ちしてくれたのが明良だった。しかし、総合病院の跡取り息子の明良が家から持ち出した資金はすぐに底をつき、2人は彼が持ってきた薬で心中を図る。病院で目を覚ました明日香は、その日以来、明良に会うことはなかった。(「天国の鬼」)
その他、60歳も年の離れた夫と金目当てで結婚し、夫の息子や孫とも寝る麻貴や、健康志向の食事作りに精を出す喜紗子など、心に闇を抱える人妻たちを描く作品集。
(集英社 660円)