「なぜデジタル社会は『持続不可能』なのか」ギヨーム・ピトロン著 児玉しおり訳
地球は深刻な環境問題と直面しており、地球温暖化を食い止めるため世界各国でさまざまな試みが進んでいる。ところが、人類に素晴らしい進化をもたらしているネット環境やデジタルテクノロジーが、実は地球や気候に貢献していないばかりか、大きな環境負荷になっていることについては、あまり知られていない。
本書では、デジタル行為の暗部にフォーカスすることで、デジタルとの付き合い方に一石を投じている。
デジタル化と環境問題は一見すると無関係のように思えるかもしれない。しかし、数字は雄弁だ。世界のデジタル産業の水、原材料、エネルギーの消費量は、フランスやイギリスなどひとつの国全体の消費量の3倍にも達する。現在、世界中に出回るデジタル機器はおよそ340億個。セダンタイプの車1億7900万台に相当する重量だ。そして、デジタルテクノロジーは世界中で生産される電力の10%を消費している。これは、原子炉100基分の電力生産量に相当する。二酸化炭素の排出量も、世界の4%を占めている。2025年には世界の電力消費量の20%を占めるといわれており、環境負荷への影響はますます大きくなる。
UAEにはマスダールシティーと呼ばれるスマートシティーが建設中で、最適化された電力供給システムであるスマートグリッドをはじめ、何百万個のデジタル機器により持続可能な都市づくりを推し進めている。しかし、街の境界線をテクノロジーの製造地域にまで拡大して分析すると、環境負荷の低減効果は甚だ疑問と言わざるを得ず、スマートシティーに関しては今後警戒すべきだ、と本書。持続可能な社会づくりには、多角的な視点が必要であることを教えられる。
(原書房 2420円)