「原爆投下、米国人医師は何を見たか」ジェームズ・L・ノーランJr.著 藤沢町子訳
1946年6月17日、医学博士ジェームズ・L・ノーラン大尉は極秘の報告書を持って飛行機に乗り込んだ。ノーランは原爆の開発・製造計画であるマンハッタン計画に携わっていた。医師たちが原爆による放射線障害の危険性を報告していたが、マンハッタン計画は実行された。
ノーランが広島で見たのはなにひとつない静寂と静止の世界だった。地面には何千もの死体が転がり、毎日、100人もの人が死んでいた。調査結果の報告書をまとめ、連邦議会での証言を終えたノーランは、戦後、核技術の軍事利用から離れ、放射線の医療での活用を強く望み、医師として残りの人生をがん治療に捧げた。
原爆投下計画に関わった医師の葛藤の記録。
(原書房 2750円)