「泣き娘」小島環著
女帝・武則天の御世、13歳の燕飛は洛陽随一の哭女(こくじょ)だ。
哭女とは、葬儀の際に遺族に雇われ故人を弔うために泣く女のことで、2年前から「泪飛(るいひ)」の名で遺族の心に寄り添って悲しみをうたう燕飛の仕事ぶりは人気を呼んでいる。
しかし、燕飛には周旋屋の右聴しか知らない秘密があった。延載元(694)年6月9日、燕飛が豪商・黄家の主人の墓所で哭礼の歌を歌い始めた直後、葬儀にはふさわしくない異装の男が乱入してきた。青蘭という名のその男は、遊牧国家との戦いで戦死した親友の死の真相を突き止めようと、彼の部下の葬儀に雇われた燕飛に会いに来たらしい。しかし、燕飛は仕事で見聞きしたことを漏らすわけにはいかない。(「胡服麗人」)
中国唐代の洛陽を舞台に描く青春ミステリー。
(集英社 781円)