「ボーダー」佐々涼子著
1995年、新米弁護士の児玉晃一は友人に頼まれてイランから来たナディア一家のアパートを訪れた。ナディアの父は専門学校の教頭、母は高校の校長で、弟のアブドゥルとの4人家族だ。
イランのアメリカ大使館人質事件の後、小学校の教師たちがアメリカの国旗を燃やして、「ホメイニ万歳、アメリカに死を」と子どもたちに復唱させようとした。ナディアがそれを拒否すると、反政府思想の持ち主だと言われ、危険を感じてイランから逃げ出してきたのだ。一家は日本に入国して東京都北区にある「十条の入管」に男女別に収容されたが、弟はほかの収容者にセクハラを受けた。
非人間的な日本の難民対策の実態をリポート。
(集英社 1980円)