「魚は粗がいちばん旨い」小泉武夫著
五郎は、集団就職で福島から上京して以来40年間、築地市場のマグロ仲卸店に勤務。今では、マグロを解体する「捌き屋」の名人として、市場関係者でその名を知らぬ者はいない。
しかし、長年温め続けてきた夢を実現するため、55歳で退職し、魚の粗だけを使った料理屋を開く準備を始める。漁師一家の末っ子で幼いころから魚を食べ続け、築地で働き始めてからも自炊で魚三昧の毎日を過ごしてきた五郎には「魚は粗がいちばん旨い」という信念がある。数カ月後、五郎は築地の裏通りに見つけた貸店舗で、ついに料理屋「粗屋」を開店する。
「イカ塩辛の赤造り」や「鰹の腹須の生姜焼き」「氷頭茶漬け」「鮃の骨酒」など、趣向を凝らした粗料理と粗にちなんだ酒が登場するグルメ小説。
(新潮社 649円)