「変な絵」雨穴著
「変な絵」雨穴著
心理学者の萩尾登美子は大学で、11歳で母親を殺したA子が描いた絵を見せて、「描画テスト」による精神分析の説明をしていた。
絵には家と木と少女が描かれているが、少女の口元の線がぐちゃぐちゃしている。母親に虐待されていたA子はつくり笑いをしようとしたが、うまく描けなかったのだ。家にはドアがない。「自分の心の中に誰も入れたくない」という逃避願望が見て取れる。木の枝は鋭く、攻撃心の表れである。だが、幹に鳥がすんでいることから母性愛が強いと判断した。A子は後に幸せな母親になったと萩尾は言うのだが、やがて衝撃の真実が……。
描画による精神分析をテーマにしたミステリー。 (双葉社 1540円)