「文身」岩井圭也著

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「文身」岩井圭也著

 明日美は、家に届いた分厚い封筒の差出人の名に動揺する。亡父・庸一の名で届いた封筒が、庸一の葬儀の1週間後に発送されたものだったからだ。

 明日美は、世間から最後の文士と称されてきた庸一を毛嫌いしてきた。この30年、会うこともなかった。明日美が小学6年のとき、母が不審死。警察は自殺と断定したが、後日、庸一は母を殺したことを認めるかのような私小説を発表。その小説のせいで殺人犯の娘とされ、人生を台無しにされたのだ。封筒に入っていたのは「文身」と題された未発表の小説だった。

 文身では、庸一の作品はすべて約60年前に自殺したことになっている弟の堅次が執筆しており、庸一は弟が描いた作品通りの人生を歩んできたことが明かされていた。

 注目の作家による新感覚長編ミステリー。

(祥伝社 858円)

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