「絵師金蔵赤色浄土」藤原緋沙子著

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「絵師金蔵赤色浄土」藤原緋沙子著

 時は弘化1(1844)年。土佐国高知城下で暮らす絵師・金蔵は、ある日、狩野探幽の贋作を描いたとして町奉行にしょっ引かれる。

 幼い頃から画才を発揮した金蔵はその才を見込まれ、江戸で狩野派表絵師十六家につながる画塾で修業。先達の絵の模倣は必須で、つい先日、古物商の男に請われて描いたばかりだった。それに探幽の落款が押されていたという。金蔵をハメたのは一体誰なのか。

 贋作の疑いが晴れ、牢を出た金蔵は、御用絵師という狭い世界に見切りをつけ、やがて妻子を残して土佐を出てしまう。江戸、名古屋、大坂をわたり、4年後、金蔵の姿は金毘羅にあった。狩野派の来歴を隠し、笑い絵を描いて暮らしていたが、実父の危篤の知らせに土佐に戻った嘉永7(1854)年、大地震に見舞われる──。

 幕末の土佐、庶民に「絵金さん」と親しまれた天才絵師の激動の生涯を描いた書き下ろし小説。

 災害、土佐勤王党の者たちの斬首など時代が目まぐるしく変転していくなか、金蔵は不安を抱え生きる人々の魂を、絵で救おうと筆を執る。「血の色は厄払い」と、大胆な構図の中に描く、血の色よりも赤い色、漆黒の黒は見るものを魅了した。

 史料が少なく、謎の絵師とされた男が生き生きと立ち上る傑作だ。 (祥伝社 1925円)

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