「日蓮」佐藤賢一著
「日蓮」佐藤賢一著
日蓮宗の開祖・日蓮の半生を描く歴史長編。
建長5(1253)年、日蓮は故郷・安房の清澄寺に帰山。漁師の家に生まれ、16歳で得度した日蓮は、「日本一の智者となしたまえ」と寺の本尊の虚空菩薩に願をかけ、17歳で鎌倉を皮切りに、比叡山など京畿の寺々で学問三昧の日々を過ごし、32歳になっていた。そして今、己が究めた仏法を世に広めるため、清澄寺に戻ってきたのだ。
集まった人々の前で説法を始めた日蓮は、法華経こそが最上の教えであり、念仏は悪だと断言。居合わせた地頭の東条景信の怒りを買い、日蓮は破門され、故郷を追われる。
権力者の北条氏を敵に回し、斬首の危機や佐渡流罪など、幾多の困難を乗り越え、衆生を救うために自らの信念に生きたその半生を克明に描く。
(新潮社 880円)