「昭和50年代東京日記city boysの時代」泉麻人著
「昭和50年代東京日記city boysの時代」泉麻人著
昭和50年=1975年といえば、70年安保から5年、あさま山荘事件から3年。大学のキャンパスからは学園闘争の張り詰めた雰囲気は消え、学生たちの服装もヒッピースタイルからニュートラなどの新しいトレンドへ移行し始めた頃だ。
その4月に、著者は慶応高校からの持ち上がりで日吉の慶応キャンパスへ。本書は、著者が経験した昭和50年代の音楽、ファッション、テレビ、映画などの思い出を語りつつ、広告研究会(広研)でのサークル活動から出版社への就職、そして独立へ至る10年間の自身の来し方を振り返ったもの。
昭和50年代の幕開けを飾るのは、50年春に発売されたムック誌「Made in U.S.A catalog」。このムックは爆発的に売れ、著者はそこで紹介されていたリーバイス501を購入。当時からトレンド情報に敏感なことを証明している。同じ4月に創刊された「JJ」はニュートラ女子の教科書となり、翌年には「ポパイ」が創刊され、city boysのバイブルとなっていく。音楽では荒井由実、シュガー・ベイブ、「ゴー・ゴー・ナイアガラ」というマニアックなラジオ番組を放送していた大滝詠一などが登場する。まさに今世界中ではやっているシティーポップの源流だ。
広研時代にパロディーCMの寵児となった著者は「週刊TVガイド」編集部に入社する。しかし、型にはまりきらない著者のこと、入社翌年には早くもラジオ番組に出演したり、雑誌のコラムを書いたりしていた。結局、昭和59年には会社を辞め独立して、波乱の50年代を終える。その間にはウォークマンが登場し、東京ディズニーランドが開業している。またマイケル・ジャクソンの「スリラー」の爆発的ヒットといったエポックがあった。
登場する固有名だけでも昭和50年代がサブカルチャーにとって大きな変わり目の時代であることがよくわかる。その最前線に位置していた著者によるライブ報告だ。 <狸>
(平凡社 2420円)