(31)吉原の全員がお得意様
吉原大門の板葺きの屋根、そのずっと上でお天道様が銀白の光を放っている。
「よいしょ」、重三郎は身の丈ほどもある葛籠を背負う。盛夏の陽光が葛籠に描かれた蔦屋の紋章を照らした。
巳ノ刻(十時)を過ぎ未ノ刻(十四時)まで、暑い盛りが貸本屋の稼ぎ時。八ツ刻には昼見世が始ま…
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