「まぼろしの女 蛇目の佐吉捕り物帖」織守きょうや著
「まぼろしの女 蛇目の佐吉捕り物帖」織守きょうや著
大川で女の土左衛門があがった。身元を隠すためか、死体は裸で、髪も剃られていて、胸に一文字の古い傷痕がある。口には血まみれの三津五郎格子の切れ端をくわえていた。夜鷹が、ごろつきの滝蔵ら数人の男が女を小突き回しているのを見たという。岡っ引きの佐吉は、女の肩が硬くなっていたことから、天秤棒を担ぐ担ぎ売りではないかと考えた。
やがて、担ぎの魚売りの勘治が昨夜から戻らないという情報が入る。勘治は三津五郎格子の小袖を着ていたという。勘治は滝蔵の仲間だったのだろうか。佐吉が勘治の身元を洗うと、20年ほど前に父親と故郷の村を出たというが、そのとき、父親が連れていたのは女の子だった。(表題作)
駆け出しの岡っ引きと若い医者が謎を解く、時代物ミステリー5編。 (文藝春秋 1980円)