「飛脚は何を運んだのか」巻島隆著
「飛脚は何を運んだのか」巻島隆著
江戸後期の売れっ子作家、曲亭馬琴が大坂の版元と新作の「すり本」(ゲラ)をやりとりするなど、頻繁に飛脚を利用していた記録が残っている。明治時代に郵便制度が導入される以前、飛脚ネットワークは全国につながる街道や江戸市中に張り巡らされていたという。
手紙や荷物を運ぶ飛脚の起源は平安時代末期まで遡り、ビジネス化したのは江戸時代だった。
利用層は武士だけにとどまらず商人や村名主へと拡大。産地の特産物を輸送し、遠隔地間でも現金を動かさずに決済を可能にする為替手形を扱い、商取引のための現金も運んだ。さらに現金を扱うため預金や融資の金融機能も担っていたという。さらに、災害の際には災害情報を届ける役割もボランティアで担っていた。
江戸の流通を支えた飛脚の全貌に迫る歴史本。 (筑摩書房 1430円)