「銭形平次」で夫婦役 大川橋蔵が香山美子に贈った自作指輪
「プライベートではすごく真理子さんを大事にされていて、食事に誘われても、必ず奥さまと一緒でしたね」
大川さんから学んだことはほかにもある。
「もともと歌舞伎界屈指の名女形のひとりに数えられていらっしゃいましたから、しぐさの一つ一つに女の私から見ても惚れ惚れするような色気がありました。しかも、何をどう演じてもサマになっていた。口癖は<芸は教わるものではない。盗むものだ>。私は14年間もおそばにいて、たくさん盗ませていただきました」
最終話のロケも忘れられない。事件解決後、平次は褒美として伊勢神宮へお参りに出かける。恋女房のお静と一の子分・八五郎を連れての水入らずの旅だ。
「ドラマはそれで終わるのですが、第1回に出演し、その後、何度もゲスト出演された美空ひばりさんと私を左右に従えて、特設ステージまで“お練り”のように歩いたんです。両脇に撮影所のスタッフや役者さんたち数百人が並び、現場が太秦映画村内だから一般のギャラリーも数百人。新たな旅立ちを象徴するかのようでした。ステージからの挨拶は<皆さまの心にいつまでも残る平次でありたい>。今もその情景がまぶたに浮かびます」