「さよなら子供たち」ナチス占領下のフランスの実情を描く
ジュリアンは母親と離れたくない甘えん坊。一方、ユダヤ人のジャンは父が捕まり母は行方不明でゲシュタポの影に怯えている。同じ中学生でも人種によって命の危険が違うのがナチが支配するフランスの実情だ。
映画は徐々にドイツ兵が増え、ドイツに協力する義勇兵も登場。レストランではユダヤの老人が義勇兵の脅しを受け、女性客から侮蔑の言葉を浴びる。友情が生まれたのにジャンは連行され、ジュリアンは目に涙を浮かべる以外何もできない。ルイ・マル監督は説教調にならず、少年たちを淡々と描くことでナチの犯罪を忘れてはならないと語りかける。
彼らが逮捕されたのは食料の横流しでクビになった少年ジョゼフの密告のせいだった。ルイ・マル監督は「ルシアンの青春」(73年)でジョゼフの原形ともいえるゲシュタポの協力者を描いた。こちらも見ごたえがある問題作だ。
(森田健司)