高田文夫氏 ガースーと同い年で働けるのはラジオのおかげ

公開日: 更新日:

高田文夫さん(72歳/放送作家)

 今なお笑いの本や舞台を精力的にこなし、先月は爆笑問題太田光との漫才が話題になった明治座での公演も務めた放送作家、ラジオパーソナリティー、落語家といくつもの顔を持つ高田文夫さん。「その瞬間」は過労で倒れて一切の仕事を辞める決心をしたという40歳の分岐点。しかし、ラジオ局の局長から生活スタイルを変えるチャンスを申し出されて……。

■レギュラーを抱え、多忙な中、朝まで飲んで遊ぶ生活がたたった

 72年も生きてるからいろんなことがあったけど、大きな分岐点となったのは平成元年の年だな。40歳になるまで、とにかく働きづめで忙しくて。

 30代では「オレたちひょうきん族」や、たけしさんとラジオの「ビートたけしのオールナイトニッポン」はじめ、若者向けの番組をいっぱいつくっていたんですよ。台本を書くだけじゃなくて自分も出たりして、週に十数本抱えていてね。

 しかも毎晩、仕事終わりに朝まで飲むし、「オールナイトニッポン」の深夜放送終わりの朝の3時からたけしさんと飲んで、6時にはバッティングセンターに行ってたからね。寝ないでたけしさんと芸人の草野球にも参加する日もあって、軍団ができる前だから俺がセカンド守ってた。そりゃ体壊すでしょう。

 たけしさんがフライデーの事件があった後は、いつ復帰できるかわからないから台本書くのも大変だし、番組が終わっちゃうとこっちも収入がなくなるから、俺も食うために仙台、札幌、名古屋と地方で番組を立ち上げて仕事をしていたんですよ。だから週末ごとに地方を回っていた。

立川談志に弟子入りして落語家も

 それに加えて、漫才ブームの後に落語ブームをつくろうと思って「らくごin六本木」という番組をやってたけど、いい落語家が出てこなくて、放送作家なのに立川談志師匠に弟子入りして、自分が落語家になっちゃった。立川藤志楼として真打ち披露のパーティーをやったり、落語会をやったりして。金もものすごいかかった。

 とにかく忙しくて、昭和の最後の年についに倒れちゃって、入院したのよ。

 いきなり倒れたから入院中は頭はぼんやりするし、年が明けて1月に世の中が平成になったことも、俺は「平成ってなんのことだろう?」とよくわからなかったくらいの状態だった。

 だから、抱えてる全部の仕事を降りたの。「もう俺は仕事に復帰できないだろう。全部辞めて、別の仕事を始めよう……」とぼんやりする頭で決心したんですよ。

 そしたら2月にニッポン放送の局長が訪ねてきて、「高田さんは今まで若い人を十分に楽しませたから、深夜放送も夜の放送もしなくていい。代わりにお昼の時間帯を毎日空けますから、これからは大人を楽しませてください」と。2月に言われて4月にスタートですよ。

 お昼の番組をやれば朝まで飲むこともないだろうと、俺の体を心配して月~金曜の昼の編成を空けてくれたんですよ。たけしさんとの「オールナイトニッポン」を10年頑張ったし、景山民夫との「民夫くんと文夫くん」も3年くらいやってたから、局としては気を使ってくれたみたい。

 それで始めることになったのが「ラジオビバリー昼ズ」。その年から32年経った今も続いているんです。平成の丸々30年間と令和2年分。

■40歳でガラっと生活サイクルが変わった

 あの日、局長がそう言ってくれなかったら、俺は40歳で引退してたんですよ。引退したら本が好きだから古本屋でもやろうかと真剣に考えてたくらいだから。大きな分岐点だったな。

 40歳からガラッと生活サイクルが変わりました。朝まで飲むことはなくなったし。

 でも、番組の台本や落語会、ライブのプロデュースや雑誌「笑芸人」の編集長やらもあってやっぱり忙しくて、12年に心臓が止まっちゃって、また倒れたけどね(笑い)。

 そしたらニッポン放送の方が「番組は週2回にしましょう」とまた気を使ってくれて、それ以来、月曜と金曜だけにしてくれて、だいぶ楽になったのよ。

 おかげで72歳というガースー(菅総理)と同い年でもまだ働けてるわけよ。

 先月、明治座で芝居と笑いの舞台をつくったんですが、爆笑問題の田中が倒れてたから、「太田、俺とやろう」と言って、漫才やったんだよ。俺、つくる方も出る方もやっちゃうからね。笑いのシンガー・ソングライター(笑い)。何をやってもうまいんだ。

 同じく先月、昔から近年までのギャグをまとめた「ギャグ語辞典」を出版。やっぱり忙しい。

 誕生日が同じ沢田研二さんはじめ、五木ひろしさん、落語家の桂文珍、月亭八方、ヨネスケ、この前舞台に出てもらった前川清さんら団塊の世代で昭和23年生まれは元気な人も多いから、まだまだ頑張ります。人が笑ってる顔が好きなんだよな。

(聞き手=松野大介)

▽たかだ・ふみお 1948年6月、東京都渋谷区出身。「オレたちひょうきん族」をはじめ手掛けた番組多数。「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」(ニッポン放送)のパーソナリティー。著作多数。新刊「ギャグ語辞典」(誠文堂新光社)を好評発売中。ギャグにまつわる言葉をイラストと豆知識でアイーンと読み解く圧倒的な面白さ(あ~わ順の解説)、「モンスター番組たち」「バラエティ番組年表」なども。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ30代アナ永島優美、椿原慶子が辞めて佐々木恭子、西山喜久恵50代アナが居座る深刻

  2. 2

    志村けんさん急逝から4年で死後トラブルなし…松本人志と比較される女性関係とカネ払い

  3. 3

    ダウンタウン浜田雅功の休養でよぎる2023年の「意識障害」報道…「前日のことを全く記憶していない」

  4. 4

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  5. 5

    悠仁さんの成人会見は秋篠宮家の数々の危機をいっぺんに救った

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  2. 7

    志村けんさん急死から4年で関係者が激白…結婚を考えた40歳以上年下“最後の女性”の存在

  3. 8

    備蓄米放出でもコメ価格は高止まり…怪しくなってきた農水省の「実態把握」

  4. 9

    日テレ「さよなら帝国劇場」でわかったテレビ軽視…劇場の階段から放送、伴奏は電子ピアノのみ

  5. 10

    フジテレビ「Live News イット!」が大苦戦中…上垣皓太朗アナが切り札となるか