飯野矢住代誕生秘話<14>「姫」の元No.1ホステス大門節江の回想する嫉妬深さ
これは筆者の想像だが、ボーイとして赤坂のクラブで働き始めたジョニーについても、快く思っていなかったのではないか。「日本のドラマー、屈指の美形。イケメン。トップと言っていい」(音楽評論家のスージー鈴木)というくらいだから、新人従業員のジョニーにクラブに在籍するホステスが色めき立っても不思議はない。
「そんなこんなで(矢住代は)トラブルも多くてママも大変そうだった。『姫』は若い子が多かったけど、特に彼女は若かったし、敵も多かったかな。私が覚えてるのはそれくらい」(大門節江)
高田馬場のスナック勤務もこのあたりの事情にあるのかもしれない。ジョニーのクラブ勤務の給料5万円ではやりくりできず、かといって、妊娠8カ月の大きなお腹で銀座に現れるわけにもいかず、そうでなくても常連客や他のホステスの手前みっともない。そこで、人知れず高田馬場のスナックに落ち着いたということではないか。おそらく、予定日の2月下旬までは働くつもりだったのだろう。
しかし、運命は必ずしも計画通りにほほ笑んでくれない。師走の12月22日の夕方、突然の激痛が矢住代を襲った。陣痛が始まったのである。(つづく)