飯野矢住代誕生秘話<23>山口洋子「せっかく美の神に祝福されながら根性は二流だ」
《彼女の家へボクが行ったことはいちどもありませんが、ボクの部屋へ、彼女は週にいちどくらいずつ遊びに来ました。ボクは乗馬が好きなので、よく誘って出かけました。部屋でふたりでいるときは、よく映画の話、文学の話をしたものです》(同)
Iが矢住代の自宅に行かなかったのは、この頃、矢住代が母親と同居していたからだろう。「週刊平凡」は「Iと彼女の間に、結婚の話は一度も出なかったし、二人ともその気はなかった」と断じているが、あくまでもIの証言に立ってのもので、実際はどうかわからない。
「歴史にifはない」と言うが、「歴史はifを重ねることで検証されていくもの」というのが筆者の持論である。もし、飯野矢住代がこのとき一人暮らしをしていて、ジョニー吉長がそうだったように、Iの方が矢住代の自宅に入り浸る関係だったら、矢住代の未来は確実に変わっていた。それは間違いないと言ってよく、同時に暗澹たる気分に襲われるのである。(つづく)